還暦シニアの遠回り合格体験記

池田正明さん(2022年土曜/エキスパート合格)


私のもとにJSAからワインエキスパートの合格通知が届いたのは、私が60歳になった時でした。還暦シニアが紆余曲折の末、手にした合格。赤いちゃんちゃんこに、葡萄バッジをつけるまでの第一関門、一次試験の奮闘記、どうぞご笑覧ください。


1) 自己紹介

「ヴォーヌ・ロマネ」のビロードの舌触りに魅せられて。

私がワインを好きになったのは、2002年のこと。今はなき銀座松坂屋で購入した「ヴォーヌ・ロマネ」がきっかけでした。(信じられませんが、3,000円台で購入した記憶があります)その一本で「ビロードの舌触り」に初めて触れ、驚くと同時に魅了されたのを今でもはっきり覚えています。しかし、広告代理店でコピーライターをやっていた一介のサラリーマンに、村名格以上のワインはそうそう飲めるものではなく、お手頃な焼酎、日本酒を専らとする時期が長く続きました。しかし、やっぱりワインを飲みたいという気持ちは強く、お値打ち品を見つけやすいボルドー右岸ばかりを長く飲み続けていました。そう、私はやっぱりワインが好きでした。


60歳を目前にしてやっと向き合えた、好きなこと。

サラリーマンには、60歳になると定年という節目が訪れます。その時に、思いました。ああ、私はもっと本当にやりたかったことに向き合おう、勉強しようと。これだけワインが好きなら、「新世界は苦手!」などと言わずに、大好きなワイン全体を最初からきちんと学んでいこう。そんな思いで、私は初めてアカデミー・デュ・ヴァン(以下、ADV)の門を叩きました。


2)1次試験対策前半戦~毎日の暮らしの真ん中に、小テスト。

紫貴クラスという「気鋭の受験集団」について。

それでも、すぐに紫貴先生のクラスに入れたわけではありません。ご存じのように、紫貴先生のクラスはADVの受験対策講座のなかでも早々と「満席」になります。それが意味するのは「先生の人気が高い」ということだけではなく、満席になる前にさっさと申し込みを済ませる「情報感度の高い生徒たちが集まっている」ということだと思います。各先生のクラスごとに特徴があると思いますが、紫貴クラスとは、ソムリエ・ワインエキスパート試験の「気鋭の受験集団」であると言えると思います。(事実、先生の要求水準は高く、生徒も知識等の面で優れた方がたくさんいらっしゃいました)自分はそういう集団にいるんだという気概を持つことは、モチベーションの維持につながると思います。私は、そこまで情報感度が高くはなかったので、たまたまキャンセルが1名出たところで、2回目の授業から「気鋭の受験集団」のお仲間になれたラッキーな生徒でした。こうして、私も毎日の小テスト地獄の一員になれたのです。


小テストの20点と19点の違い。

はい!小テストの後のテイスティングワインの美味しさが違います!というのも紛れもない事実ですが、もっと重要なのは、勉強の質と量の差だと思います。たったの20問なのに、1問でも隙を突かれてしまうということは、それだけ緩い勉強をしているということです。私は、そのように考えて、毎週の勉強に取り組みました。しかし、そうそう上手くいくものではありません。「正しいものを選べ」と「誤っているものを選べ」を連続して読み違えて、相当な点数を落とした日(ロワールでした)は、授業後、渋谷の街に潜り込んで自分を責め続けました。あの頃は、まさに毎日の暮らしの真ん中に、小テストがあったような気がします。そんな毎週の小テストに向けた勉強方法は以下の通りです。

<講義視聴>

●オンラインアカデミーの講義動画を1.5倍速程度で何度も視聴する。(2回目以降は通勤中に歩きながら聞いていました)

<問題演習>

●「Aki’s Check」と「実践問題」を全問正解するまで解く。

(この時、間違えた問題は必ずテキストに戻りどこに当該事項が書いてあるかを確認し、テキストを俯瞰で記憶するようにします)

●オンラインアカデミーの練習問題を1単元につき、150~200問程度解く。(オンラインアカデミーは、通勤時間等のスキマ時間の有効活用に効果的です)

※上記の他、「Sommelier for free」の小林史高先生のYOU TUBE動画視聴や、1回目の授業の補講で出席した大塚先生からいただいた問題演習等も行いました。

上記を行うための通常の毎週の勉強時間は、個人差はありますが20時間前後かと思います。仕事や家事の合間に、毎週20時間を捻出するのは、かなりしんどいと思いますが、その位の勉強時間を確保できれば、小テストで20問中18~20問正解といった結果を出すことでき、モチベーションは次第に高まっていくのではないかと思います。しかし、私も会社の会合等で勉強できない時があり、朝5時に起床して追い込んだこともしばしばでした。(追い込まれると意外に起床できるもので、早起きはおすすめです)毎回の出題範囲によって結果は異なりましたが、私もなんとか時間をやりくりし、ほぼ順調に過ごせていたように思います。夏が訪れる前までは。


スモールグループという、かけがえのない仲間の存在。

こうした厳しい勉強漬けの毎日をメンタルの面でサポートしてくれるのが、スモールグループの存在です。自作のノートを見せ合ったり、小瓶交換(ブラインドテイスティングの練習)をしたり、勉強会をしたり、そして節目節目で思いっきり飲んだり…。同じ目標のもとにいるからこその連帯感は、かけがえのないものでした。このスモールグループでは、受験が終わった今でも集まって、お寿司屋さんでワインのペアリングを楽しむなど、ワイワイ楽しくやっています。(ワインを飲むと、必ずアルコール度数を当て合う、端から見たら変なグループですが…)


3)1次試験対策後半戦~「あ、落ちるかも」からの基礎固め。

人は忘れる動物であることを、忘れていました。

この試験の勉強の難しさのひとつは、毎週新しい産地の知識を詰め込みながら、同時に、過去に吸収した知識を忘れないよう管理していくことだと思います。私は、毎週の小テストの対応で手一杯で、過去に習った単元についての復習は疎かになっていました。そうなると、記憶の忘却曲線は受験生には冷たいのですね。とくに高齢者であればあるほど…。

さらに今にして思えば、かなり無謀でしたが、私はこの試験とは別の国家試験の予定を7月上旬に入れていたため、授業を1回休み、7月中の10日間程はワインの勉強に一切手をつけない日が続いていました。こんなことがいいわけありません。暑さが厳しくなった7月下旬の期末テストを受けた時には、私の成績は赤信号が灯るまで下がっていました。落ちる!と思いました。1次試験本番まで、あと1か月でした。


土壇場で掲げた、5つの目標。

その時、私が考えたことは、「私は、紫貴先生が授業中におっしゃったことをやっていただろうか」ということでした。できていないことはたくさんありました。今から考えると、1か月前にそれ?って感じですが、やろう!と決めたことは以下の通りです。

① 白地図の書き込みを行い、オリジナルノートを作成する。

② 新世界の一覧表を作る。

③ 問題集を絞って、ひたすら繰り返す。

④ 高校生用の地図帳を買って、フル活用する。

⑤ 暗記事項を部屋に貼る。

1か月前のこの時期に、もっともふさわしくないのは、①という気がしますが、私が最も気合を入れて取り組んだのは、なんと①のオリジナルノート作りでした。


それでもやっちゃった!趣味に走った回り道。

私は、長らくクリエイターをやっていたこともあり、自作のオリジナルノートをつくるとなると、ムクムクとこだわりが湧いてきます。ノートのサイズは?紙質は?ペンは?色鉛筆の種類は?やろうと決めた翌日から文具店巡りです。この時期に、そんなところにこだわっている場合ではないのですが、自分を制することができませんでした。結果として、デザインフィル ミドリカンパニー社のMDノート、SAILOR社とKuretake社のカリグラフィペン(1.0/2.0等)、ドイツFaber-Castell社の水彩色鉛筆(12色)等を次々と購入。喜々としてノート作りを進めながら、上記②~⑤を同時並行でかなりのスピードで進めていきました。


本番1か月前の戦友たち(MDノート、カリグラフィペン、水彩色鉛筆)


ADVから配布された白地図をノートに貼り、書き込みしていきます


新世界一覧表(オリジナルノートに貼って一元化しました)


しかし、始めたのが8月でしたので、最後のジョージアのページが完成したのは、一次試験本番の前日でした。だた1か月で集中して世界の産地マップをまとめたことや新世界の一覧表を作成したことは、内容の理解、記憶の定着に大きくプラスに作用したと思います。まさしく自分の中に「地図」ができた気がしました。受験当日、幾ばくかの達成感と自信、そして出来立てほやほやのノートをお守りのように試験会場に持って行ったことを今でも覚えています。



4)ゴールデンウィークは、最後のチャンス。

ゴールデンウィークに、イタリア旅行に行くのはいいけれど。

それは、私です。もちろん、ワインの自宅での勉強の話です。皆さんも、ゴールデンウィーク明けの授業では、イタリアの小テストがあるのではないでしょうか。昨年もそうでした。当時、小テスト重視のスタンスだった私は、ここぞとばかりに、イタリアの勉強に打ち込みました。手元の資料を見ると、ゴールデンウィーク期間中の勉強時間のすべてをイタリアに費やしていました。これは理想的なゴールデンウィークの使い方とは言えなかったと反省しています。小テストで目標達成して、ご満悦の私に会いにいけるのなら、言ってあげたいです。「あなた、このままだと夏には大変なことになりますよ」と。


それは、自分の勉強方法を俯瞰で見直し、最善のフォームを作る、最後のチャンス。

小テストのプレッシャーが大きいため、つい小テストを重視しがちになりますが、小テストはパーツでしかありません。この時期は、これまでの自分自身の勉強方法とその状況を冷静に俯瞰で見直し、最適化することが重要だと思います。そして自分に合った最善の勉強フォームを作ることが重要だと思います。ゴールデンウィークが過ぎると、また各単元のインプット、アウトプット(小テスト)の過密サイクルが始まるため、それができるのはこのゴールデンウィークが最後のチャンスだと思います。


最適化の指針は、紫貴先生が授業中やSNSでおっしゃるお話です。「白地図の書き込み、やってますか」、「地図帳は買いましたか」、「スキマ時間を活用してますか」、「予習復習はできていますか」、「暗記事項を部屋に貼っていますか」、「ピノ・グリージョとウォッカでアルコール度数把握の練習をしていますか」…。それら一つひとつを検証して、自分に必要なことをあぶりだし、このゴールデンウィークから始めれば、この先の後半戦はきっと軌道に乗ります。それは勉強フォームを確立することにつながるからです。そうすれば、自ずと一次試験本番に向けて順調に仕上がっていくものと思います。


ぜひ、ご自身の夢に近づく、ゴールデンウィークをお過ごしになってください。そして、栄えある合格を、遠回りでなく最短コースで、勝ち取られることを祈念いたします。

私が合格できたのは、紫貴先生のご指導と、クラスメイトやスモールグループのメンバーの温かい励ましのおかげです。この場を借りて御礼申し上げます。


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講師から

池田さんは、土曜クラスの最後の1席に、キャンセル待ちで入ってくださったことを今でも覚えてます。1回目はお振替、初めてお会いしたのは2回目でしたね。

最初は一番後ろに座っていらっしゃいましたが、席もどんどん前に座ってくださるようになったのも覚えています。

やっぱり「ワインが好き」は強いのだなと思いました。これからも大好きなワインを楽しんでくださいね。


紫貴あき:夢を叶えるブログ

女性ソムリエ/ワイン講師 アカデミー・デユ・ヴァンや各種メディアでワインの魅力を発信中。 ーーーー 全国アドバイザーコンクール優勝 オーストリアコンクール優勝 ボルドーワインコンクール3位 WSET®スカラシップ受賞 全日本ソムリエコンクールセミファイナリスト ーーーー WSET®Diploma JSA認定 ソムリエ・エクセレンス ASI認定 国際ソムリエ 現在も夢に向かって邁進中

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